看護の実践

「Aさんの願い 迷いつつ選んだが......」

糖尿病と慢性閉塞性肺疾患に悩みながら一人暮らしをしていたAさん。
夏のある日、体調の悪化から緊急入院をすることになりました。

「やるべきことはやった。機械につながれながら生きるのは勘弁してくれ」と
常々話していらっしゃいましたが、病状が進み、離れて暮らす娘さんに電話で相談したところ、
「呼吸器をつけてほしい」とのこと。

本人の意志と相反していたため、あらためて意志を伺うと「娘が言うのであれば......」と、
気管挿管、人工呼吸器の装着を承諾されました。

看護の現場ではさまざまな状況下の患者さまとお会いします。
治療法やケアの仕方が「本当にこれでよいのだろうか」と、
悩みながらの選択を迫られる局面も多々あります。

今後も患者さまの"願い"に対して責任を持ち、
お一人おひとりの人生にしっかりと向き合っていきたい──

おだやかに旅立たれていったAさんを思い出すたびに、そんなことを考えてしまいます。

(中野共立病院 2F病棟 松本亜矢子)

「長年の希望『お花見』ができた」

筋萎縮性側索硬化症という進行性の難病を患っているIさんの夢はお花見をすること。
天候に恵まれず、さらには体調悪化を理由になかなか実現できませんでしたが、
昨年それがようやく叶いました。

人口呼吸器、痰を取るための吸引機とチューブ、酸素ボンベを車椅子の下に積んで出発です。
久々の外出ということもあり、お知り合いとあいさつを交わしながら桜並木に向かったため、
到着した時点で当初予定していた帰院時間になっていました。

ただIさんご本人が「まだ行く。大丈夫だから」と笑顔を見せ、
結局1時間半を超すお散歩となりました。

これが自信につながったのでしょう。
「兄の経営するお店で食事会を」「夫が入院している病院にお見舞いに行く」という目標を
すでに実現させ、現在は「私と同じ病気の方々にお会いしたい」そうです。

夢が新たな夢を生む過程を間近で見ることができ、
その夢を叶えるお手伝いができてうれしく思うのと同時に、
患者さまの"生きること"への真摯な姿勢に励まされる日々です。 。

(上高田訪問看護ステーション 松村恵美子)

「患者・家族の想いに寄り添って」

自宅で意識消失しているところを発見され、
リハビリ目的で当院に転院してこられたSさんには、
麻痺に加えて高次脳機能障害による注意力の低下が見受けられました。

一人暮らしは難しい状況でしたが、本人の希望は「自宅への退院」でした。

そこで、都内在住の息子さんは父親の想いを受け止めようと同居を決意。
私たち医療従事者もご家族を全力でサポートするべく動き始め、
住居手配や費用面の相談、どのようなサービスがどれほど必要かを、
看護職員、リハビリスタッフ、本人や息子さん、
さらにはケアマネージャーを加えて多角的に検討しました。

現在はより具体的な目標を立て、新たな自宅に帰るために奮闘しています。
Sさんができる生活行為がだんだんと増えているため、ケアプランの自費分が減少、
さらには息子さんにも自宅での介護のイメージが湧いてきたようです。

患者さまやご家族の想いを受け止め、寄り添っていくことの手ごたえを、まさに病棟全体で感じています。

(中野共立病院 回復期リハビリ病棟師長 田島秀佳)

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